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しろくま先生のブログ
しろくま歯科医院より歯にまつわる楽しいお話や、
毎日のケアについてのアドバイスを載せていきます。
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当院では、心停止の救命措置に必要なAED(自動体外式除細動器)を設置しております。

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2008年8月27日 (水)

歯の生命線を知っていますか?

本日は、花田先生、井田先生、野邑先生の共著である「むし歯・歯周病」よりお届けいたします。

歯の生命線を知っていますか?

問題になるのは、象牙質に出来た虫歯が歯髄に近くまで迫っているときです。感染した象牙質を出来るだけ確実にとろうとすると歯髄を痛めてしまいます。

「神経をとりましょう」と歯科医にいわれるのはこんな時です。神経というのは歯髄のことです。

麻酔をして歯髄を取り、歯髄のあった空洞を埋めてしまう処置をすると、費用もあまりかかりませんし、治療にも時間がかかりません。

しかし、問題があります。

歯髄は歯の組織に栄養を送り、必要に応じて歯の内側から象牙質をつくる働きをしています。歯髄を取り除いてしまうと象牙質の細胞は死んでしまいます。歯はもろくなり、歯の寿命を縮めてしまうことになるのです。

歯髄を活かしたいのですが、それはたいへん難しいことです。

そこで、こういう場合には、感染した象牙質をある程度まで削って、そこに薬を詰めておき、数ヶ月まちます。その間に象牙質が硬くなり、歯髄の内側にも新しい象牙質が出来ます。それからもう一度掘り返して処置をします。

このように出来るだけ歯髄を残す治療をした方が、長い目でみると歯を守る治療になるのです。

時間がかからなくて、すぐに痛みがとれる治療がいい治療とは限らないのです。歯髄を取ると言うことは、歯を死なせることです。

参考文献 むし歯・歯周病~もう歯で悩まない~ 花田信弘 井田亮 野邑浩美 共著 小学館 

2008年8月19日 (火)

歯科のX線(レントゲン)撮影は本当に安全?

本日は、徳島大学歯学部創立30周年記念出版「なるほど現代歯塾」よりお届けいたします。

歯科のX線(レントゲン)撮影は本当に安全?

◇歯科のX線撮影も危険?

歯が痛くなると歯科に行きます。そこでは、必ずといってよいほど歯のX線(レントゲン)写真をとります。けれど、「体に害を及ぼす危険なX線を浴びて本当に大丈夫なの?」と疑問を持つ方もいらっしゃるのではないでしょうか?

X線を浴びると、毛が抜けたり、失明したり、がんになってしまうのではと不安に思っていませんか?

戦時中に広島や長崎で、不幸にも原爆による放射線を浴びた人の中には、そのようになってしまった方がたくさんいらっしゃいます。たくさんの放射線を浴びたほとんどの方が亡くなってしまいました。

X線も放射線の一つなので、浴びれば体になんらかの異常が現れるはずです。けれども皮膚が赤くなる、毛が抜ける、失明するといった症状は、確定的影響といわれ、ある程度以上のX線(しきい値)を浴びないと絶対に起こりません。

歯のX線撮影では、最大でも1回、約5ミリのシーベルト(X線の単位)です。「皮膚が赤くなる」というのが最初の症状なのですが、これは2シーボルトで起こります。つまり続けて約400回の撮影ということになり、歯のX線撮影ではこのような事は絶対に起こりません。

白内障では5シーボルトがしきい値ですから、千回ということになります。また、撮影後に時間が経つと回復が起こるので、一生のうちで400回撮影しても安全です。

一方、放射線を浴びると、がんになるといわれています。。放射線による発がんは、確率的影響といわれ、しきい値がなく、浴びた量に応じて、がんになる確立が高まってきます。歯のX線撮影を1回行うと、そのうちの一人がそうなるということを意味しています。個人単位で考えるならば、無視することができるくらいのものです。

妊娠している場合は?

妊娠している場合はどうでしょうか?胎児に影響が出るのは、胎児が100ミリシーボルト以上浴びた場合に奇形(小頭症)が起こります。歯のX線撮影では、そのような大きな線量はありえませんし、胎児に直接X線があたることもありません。

妊娠しているかどうか分からない場合はどうでしょうか?

着床前期(受精後9日まで)では、50ミリシーボルト以上で胎芽死亡が起こり流産しますが、これも歯のX線撮影で起こることはありません。しかし、胎芽や胎児が被爆することは望ましいことではないので、その時には鉛入りのエプロンを使用すればより安全です。

参考文献 徳島大学歯学部創立30周年記念出版「なるほど現代歯塾」 医歯薬出版

2008年7月31日 (木)

退化型の若者たち1

本日から2回に分けて、丸橋賢先生の「退化する若者たち」よりお届けいたします。

戦後日本人の顔が崩れた!?

敗戦直後の1947年から49年にかけてベビーブームがあり、その世代を団塊の世代と呼び、そろそろ定年を迎える年齢です。

団塊の世代の人々と、いま20歳の人々の顔を比較してみると、これが同じ日本人であるとは思えないほど形態が異なってしまっています。たった50年の間の大きな変わり様です。

顔を正面から見ると、下顎のエラが張り、丸くまたは四角い丈の短い寸づまりの概形は、驚くほど縦長となり、下顎のエラは細く、オトガイ(下顎の先端)にかけて尖った形となっています。それに加え、顔が鼻筋から下顎の先端(オトガイ)にかけて、左右どちらかに大きく曲がっている例が目立ちます。というより、鼻筋から下顎の先端(オトガイ)にかけて、左右のどちらかに大きく曲がっている例が目立ちます。というより、鼻筋からオトガイにかけてまっすぐで、左右対称の顔はあまりみられなくなっています。

横顔の概形にも大きな違いが認められます。下顎角という、下顎のエラの部分の角度が大きく開き、弓形、または三日月型となっています。その角度は団塊の世代では100度くらいで、直角に近く見えたのですが、退化型の若者の下顎角は120度にもなっています。

私が問題視するのは、短い期間にこれほど激しい形態の変化を見せているのは、世界中で日本だけの特異的な現象である、ということです。

さらに、縦長で横から見た顔型が三日月型の退化顔の若者には、体力、気力の低下ばかりではなく、頭痛、肩こり、めまい、吐き気、手足の痺れなど、強い不快症状あつきまとおう例がほとんどなのです。

最近の日本人の活力や持久力の低下、学力低下、不登校やニート、非行の増加などの根底には、このような、退化という近年の日本人の生物学的異変があると思われるのです。

◇進化により獲得してきた形態

あらゆる生物の多様な形態には、それぞれ明確な理由があります。必要とする能力を獲得するために何十万年、何百万年をかけて、繰り返して体を使い、獲得してきたのです。

魚は泳ぐために、鳥や蝶は飛ぶために、猛獣や草食動物は歩き走るために、現在の形態を獲得してきたのです。

体の細部にいたるまで、形態は合目的的であり意味があるのです。

キリンやダチョウは遠くまで見渡し、敵や餌を発見するために長い首を持ち、広範囲を視野におさめる目を持ち、速い脚を獲得しています。しかし、ライオンのように、狩りをするための太い脚や爪、牙などはもってはいません。反対にライオンは長い首を持っていれば目立ち、獲物に逃げられるので首は短く、獲物を襲う目的で太く強力な脚、爪、牙を獲得しています。

歯や歯列、顎骨などの形態、腸などの消化器の形態まで、食性にかなったものとなっているのです。

人間は大まかにいえば猿、猿人、原人の進化の過程を経て、ヒト(ホモ・サピエンス)となる道を歩んで来ました。森から草原に出たことが立ち上がるきっかけと言われますが、立ち上がることにより遠くを見る視力を獲得し、一方、自由になった手を活発に使うようになり、その刺激によって脳容量を増大させてきました。

立ち上がることは四肢で体を支えるのとは違い、重力に逆らって直立し、行動し、物を持ち上げなければいけません。そのため、しだいにヒトとしての脊柱(背骨)やそれを支える筋群を発達させてきました。

私たち人間の体も、他の生物と同様、長い歴史を経て、必要性によって現在の形態を獲得してきたことをまず理解しておきたいのです。決して理由無く出来た形態ではなく、その形態なくして必要性を満たすことが出来ないのが生物の形態なのです。

明日へ続きます。

参考文献 退化する若者たち 丸橋賢著 PHP出版

2008年7月27日 (日)

歯の崩壊パターン

本日は、野田先生の著書「歯周病で死ぬのはイヤだ!」よりお届けいたします。

年をとるほど、歯のエナメル質は成熟し、虫歯は出来にくくなります。ところが、35歳を過ぎたあたりから歯周病にかかり、歯肉が下がって、歯の根元が露出するようになります。

また、間違った歯磨きの仕方によって、歯肉が下がるケースもあります。これは、力を入れすぎて、歯肉を傷つけてしまうからです。

いったん下がった歯肉は、元に戻すことは出来ません。歯周病の兆候に気が付いたら、とにかく早めに治療を受けて、歯肉が下がるのを止める努力が必要です。

また、あまり知られていなののですが、噛み合わせによる歯肉の打撲も問題になります。ここで簡単に説明すると、年を取って歯肉が衰えると、自分の噛む力で歯肉が打撲するようになります。高齢社会に入り、歯肉の打撲傷で受診する方は増えていますので、注意が必要でしょう。

次ぎに、その典型的なパターンについて記します。

Ⅰ 十代 小学生の頃、お母さんに手を引かれて来院、虫歯治療

Ⅱ 二十代 以前に治した歯が痛み出し、歯医者に行くと、神経を取られて銀歯に

Ⅲ 三十代 被せた銀歯が痛くなり、歯医者に駆け込むも手遅れで抜歯。さらに隣の歯を削  ってブリッジに

Ⅳ 四十代 ブリッジが脱落したので、もう一度作り直してもらいたいと来院。ところが、ブリッジを支える歯が崩壊しており、やむなく抜歯。ついに部分入れ歯となる。

Ⅴ 五十代 最近、歯がぐらつくので歯医者に行くと、歯槽膿漏との診断。手の施しようななく、抜歯。欠損部分をブリッジや部分入れ歯で補うも、長持ちせず、次々と抜歯。

Ⅵ 六十代 歯科受診のたびに抜歯を繰り返し、そのたびに入れ歯を作り直し、口腔内の大半を入れ歯が占領する

Ⅶ 七十代 ついに総入れ歯

自分の歯がボロボロになったころに死期を迎えられればいいですが、高齢社会では、そういう思い通りにはいきません。結果、治療の苦労に加えて、自分の歯がない歳月を不自由に過ごさねばなりません。

日本人の歯科治療にたいする認識が現状のままでは、相変わらず悪環境を続けることになるでしょう。何とかしてそれを断ち切らねばいけませんし、少なくとも次世代にはそれを断ち切ってもらいたいものです。

参考文献 歯周病で死ぬのはイヤだ! 野田隆夫 野田雅代 共著 光人社 

2008年7月 1日 (火)

親知らずは本当に抜かなければだめか?

本日は、清水敏之先生の著書「見えないから怖い口の病気」よりお届けいたします。

親知らずは本当に抜かなければだめか?

基本的には、きちんと生えていないものは抜いた方が無難です。特に女性は妊娠中に症状が出現すると本当に厄介です。

ただ症状もなく、特に大きな予定がない方ならば、今年抜いても、来年抜いても、予後は変わらないという程度のものです。

症状が一度もでなくて完全に埋まっている時は様子を見るという選択肢もあります。

矯正治療の時、症状が一度でも出たとき、親知らずの頭が一部出ている時は抜歯をお勧めいたします。ここで大事なのは抜かないと決めた時の予後をしっておくことです。親知らずは細菌に感染しやすいところなので、感染すると膿みがたまり大きな炎症になることがあります。すごく痛みが出れば抜こうと決心する助けになりますが、抜くのとあわせて二回痛みを感じなければなりません。しかし、気持ちの上では納得できます。

また非常にまれですが、親知らずの手前の大臼歯が感染しやすくなり、むし歯になって2本とも抜かなければならなくなるケースがあります。10年、20年平気で無症状で経過することもありますが、高齢になって抜くのも、また大変です。

基本的には患者さんの決めることですが、私が相談をされた時は矯正治療など他の治療目的がなく、症状が一度もなく、レントゲン所見で完全に骨に埋まっている時は「様子を見てもいい」と説明します。

以下は抜くと決めた方への注意事項ですが、その他の外科的処置にも応用できますので参考にしてください。

*親知らずを抜く方へ

親知らずは体の中で一番大きな歯の一つです。骨の中に埋まってしまっている親知らずを抜く場合は抜く歯をまずバラバラにし、その手前の歯を保存しながら抜歯します。(通常手術は40分程度かかります。)また、骨も手前の歯を保存するために一部削りますので、必ず腫れます。喉が痛くなったり、口が開けにくくなったり、肌が変色することもありますが、七日から十四日でほぼ消えるので心配いりません。(腫れても冷やさないでください)

まれに、下顎の神経の麻痺が出現することがありますが、ほとんどの場合は数ヶ月で改善していきます。しかし、中には改善しないこともあります。

術後は口の中にカサブタが出来て次第に治癒しますので、たばこ、酒は控え、体を安静にしてください。七日程度は無理をされるとカサブタが出来ずに激しい痛みが出現することがあります。また、術後、唾液に血が混じることがりますのが特に心配はありません。ただ、たばこを吸う場合は四、五日続くこともあります。麻酔が切れるころ少し出血する傾向がありますので、心配な方はガーゼなどで30分から1時間しっかり圧迫してください(食事はしっかりとってください)

*投薬に関して

痛みが出た時。我慢出来るようでしたら痛み止めは服用しなくても構いませんが、化膿止めの薬は毎回規定どおり正しく服用してください。特に注意すべきことは薬のアレルギーで、湿疹、強い下痢などの症状が出現した時は必ず服用を中止してください。

*通院は抜いた次の日の消毒と一週間後の糸抜き、その後状態により二、三回の消毒通院が必要です。

参考文献 見えないから怖い口の病気 清水敏之著 早稲田出版

2008年6月28日 (土)

歯肉の腫れや出血はほっとけない

本日は、花田信弘先生、井田亮先生、野邑浩美先生の著書よりお届けいたします。

痛くもかゆくもないのに、歯の根元では歯周病が始まっています。

歯周病は、歯を支えている骨、歯槽骨が溶けてなくなってしまう病気です。痛くもかゆくもないので、気づきにくいのが厄介なところです。

「歯ブラシで磨くと血がでる」、「歯肉が腫れている」程度のところで気がつくと、治療も比較的簡単ですので、ちょっとおかしいな、とおもったら迷わず歯科医に行きましょう。

歯周病の治療も虫歯の治療を同じように、検査から始まります。まず、歯周ポケットの検査(ポケットプロービング)をします。

歯周ポケットとは、歯と歯肉の間のすきまです。ここが歯周病の発生場所です。歯と歯肉がぴたっと着いていれば、ポケットは出来ないのですが、もともと1mmぐらいの歯肉溝というすきまがあります。これが、歯周病のために30歳代半ばぐらいから徐々に隙間が開いてくるのです。

3mm以上の隙間が出来ると、炎症が起き、出血します。歯周病が始まっています。ポケット診査ですが、中の歯垢をキレイに取り除き、歯肉の腫れがおさまってから、細い針のような器具を歯と歯肉の隙間に差し込み、歯周ポケットの深さを測り、出血のあるなしなど歯肉の状態を調べます。

それともう一つ重要なのは、X線検査です。歯を支える骨に変化がないか調べます。歯周病が歯の根元ですすむと、歯を支えている歯槽骨が、自分にも害が加わることを恐れ、退却していくと思ってください。

この歯槽骨が減っていないかを調べるのがX線の検査です。

歯周病は誰にでも起こる病気です。早期発見があなたの歯を救います。

参考文献 むし歯・歯周病 ~もうむし歯で悩まない~ 花田信弘 井田亮 野邑浩美共著 小学館

2008年6月21日 (土)

虫歯の進行具合と症状

本日は、青山健一先生の著書「よくわかる家庭の歯学」よりお届けいたします。

●虫歯の進行度合いと症状

C1

エナメル質に限った虫歯の事です。以前は「早期発見・早期治療」を謳い文句に、この程度の虫歯でも治療していました。今ではC1は治療すべきではないという考えかたに変わってきています。というのも、虫歯の自然治癒力がないと考えられていたのですが、エナメル質に限っては、再石灰化によって虫歯が治癒できるのです。とくにフッ素を使用する人に、再石灰化が起こりやすいので、削って治すのではなく、フッ素を使って再石灰化すかどうか経過を見ていくべきです。

ちなみに、エナメル質には神経が通っていないので、痛い、しみる、といった自覚症状はまったくありません。

C2

虫歯が象牙質まで達した虫歯の場合です。象牙質は、エナメル質と違って、再石灰化も起こさず、硬さも5~6倍柔らかいので、あっという間に歯の神経に到達してしまいます。

この状態でなるべく早く治療をしなければなりません。象牙質の虫歯も深くなると、痛みやしみるなどの自覚症状が出てきます。とくにデンタルフロスを使っていない人は、歯と歯の接点(コンタクト)から虫歯になり、本人が気づかないうちに虫歯が進行する場合が多いのです。

C3

歯の神経にまで虫歯が到達すると、常時の激痛になります。ここまで虫歯が進行すると、歯の神経を取り除かなければなりませんが、いったん歯の神経を取ると、その後その歯は、血液の循環による栄養を補給できなくなりますので、年々弱くなっていきます。そうしていつかは枯れ木と同じようになってしまいます。

ですから、C2の段階までのうちに早めの治療を受けることが大切です。

C4

虫歯に感染している部分を取り除いて、歯肉の上から歯の見える部分がほとんど無くなり、歯の根元だけが残っている状態です。虫歯が歯肉にまで達してしまうと、このC4の歯はもう抜歯になってしまいます。

早期治療が歯の寿命を縮めるとき

従来の歯科治療では「早期発見。早期治療」が常識的な方針でした。しかし、今ではフッ素の普及や定期的な健診により「早期発見、定期検診」が効果的だというスタンスになってきました。

歯の表面の最も硬い部分のエナメル質に限定した虫歯では、早い時期から削って治療することは逆に歯の寿命を縮めることにもなりかねないのです。

しかし、エナメル質は人間の体の中で最も硬い部分であり、虫歯の進行もとても遅く、数年たってもたいした進行がないこともよくあります。

それを歯科医院で簡単に削って詰め物をするために、虫歯より大きく削ってしまうと、数年かけて進む虫歯の進行を、一瞬にして数年分を削ってしまうことになるのです。

エナメル質の下にある象牙質はとても軟らかく、虫歯の進行が早いので、象牙質まで進行している虫歯は「早期発見、早期治療」の対象になります。

患者さんの立場のなると、自分の虫歯がエナメル質に限定したものなのか、それとも象牙質まで進行した状態なのかは、自分で判断することは難しいと思います。

歯の表面が黒っぽくなっているぐらいの虫歯は、エナメル質に限定していますので、削ってまで治療する必要はありません。

参考文献 よくわかる家庭の歯学 青山健一著 桐書房

2008年6月17日 (火)

ジルコニア

本日は、加藤大幸先生の著書「よくわかる歯科インプラント治療」よりお届けいたします。

ジルコニア

医療の現場では、2年おきくらいに新しい技術が導入され、大きなイノベーションが起きています。そのなかには、医療メーカーや製薬会社が売り込みをかけて大々的に発表するものがありますが、本当に使えるものはごくわずかなのです。

しかし、発表当時は全くダメなもの、それから2年も経つと先例されて使えるようになってきます。たとえば、型どりした歯型をコンピュータで三次元的に読み込んで機械で人工歯を作る技術、CAD/CAMがあります。当初は適合も悪い上にコストも高く、とても使える代物ではありませんでした。しかし、3年ほどまえからアメリカで徐々に普及してきて、あっという間に技術革新されました。

日本でも2006年11月に薬事法の認可が降りて、本格的にCAD/CAMを使った治療が始まりました。現在では工作精度も上がり、歯科技工士が造る補綴物(人工歯)と遜色ないレベルにまできていますし、人工ダイヤモンドであるジルコニアを使った人工歯も作れるようになっています。

ジルコニアの利点は、金属をまったく使うことなく、天然歯と遜色のない審美性を持った材質であることです。もちろん強度も強く、理想的な材料といってよく、身体に害がなく、生体親和性に優れたジルコニアは、今後の歯科治療を変えていくでしょう。

私のクリニックでも昨年からジルコニアを使った治療を開始していますが、非常に扱いやすく、しかも見た目も美しく、納得の行く治療が可能です。

まず型どりした歯型を専用の読みとり機でデータ化し、その情報だけをスウェーデン工場(現在は幕張にアジアの拠点が出来ました。)にメールで送信いたします。そうすると一週間くらいでジルコニアの人工歯の土台が出来上がってきます。

それを噛み合わせや歯の色のチェックをしながら仕上げて行くのですが、型どりから仕上げまで2週間もあれば完了です。将来的にはCAD/CAMで治療するのが当たり前になるでしょう。

ジルコニアクラウンとは、金属を一切使わない修復システムで、生体親和性と優れた審美性を追求する治療法です。

ジルコニアは審美的な白色を有しているだけではなく、生体親和性においてもすぐれ、医療分野で人工関節の球状骨頭部などに既に20年近く用いられています。

またスペースシャトルの断熱保護材やF1のブレーキディスクなどにも使用され、過酷な状況下での耐久性も証明されています。

今までのオールセラミッククラウンではどうしても強度的に弱く、せっかく治療したのにも関わらず割れてしまうことがありました。ジルコニアは人工ダイアモンドやセラミック包丁などに使われている材料で、通常のセラミック強度よりはるかに硬く、強靱で科学的に安定した物性を持っていますが、あまりにも硬すぎるために加工が難しく、今まで歯科治療に使うことが困難だったのです。

しかし工業界では一般的になってきたCAD/CAMという技術を使い、ジルコニアの塊(インゴット)をコンピュータで切除しえ作ることが可能となったのです。

今までは工作精度に問題があり、治療に使えるようなものではありませんでしたが、近年CAD/CAMの技術が進化して、現在では30ミクロン以下の適合も可能となり、技工士さんが手作業でつくる金属クラウンと遜色ないレベルに達しています。将来的にはインプラントを除くすべての人工歯がジルコニアに移行していくと思います。

現在、私のクリニックでもジルコニアクラウン・ブリッジを使用した治療を行っておりますが、透明性が高く、口腔内では天然歯ととものバランスのとれた自然な印象を与えることが出来ます。

歯を作り出す歯科技工士はとても過酷です。ひとつひとつハンドメイドで丁寧に仕上げられるのですが、彼らは毎日徹夜を覚悟で、応えてくれているのです。CAD/CAMが、彼らの過酷な労働条件を少しでも軽減してくれれば、技工士さん達のストレスも軽減されるでしょう。 722

イギリスには「ビスポーク」という言葉があります。721_12

お客さん一人一人にあった型を元に、革靴や服をつくるシステムの事です。昔は当たり前のように行われていたことですが、現在では限られた一部のセレブのための特別なサービスとなってしまいました。

例えば、ビスポークで靴を作るとだいたい50万円くらいします。こんなに高いの?と思うかもしれませんが、ビスポークは最低でも2足は作るのです。そして、一足目で当たりが強いところをや履き心地をチェックして、その靴を捨ててしまいます。もったいない事ですが、そうして出来上がった靴は靴擦れもなく、手入れを怠らなければ一生ものなのです。価値あるものはそれなりに高価なのです。

将来、歯科クリニックに行くと、「ビスポークにしますか?それとも機械で作りますか?」などと聞かれることになるかもしれません。

参考文献 よくわる歯科インプラント治療 加藤大幸著 現代書林

2008年6月 6日 (金)

口内炎はあぶない

本日は、名古屋大学医学部口腔外科学講座教授 上田実教授の著書「咀嚼健康法」よりお届けいたします。

口内炎はあぶない

口のなかにはさまざまな病気が出来ます。なかには癌のようなきわめて危険な疾患もあります。代表的な口腔癌の舌癌は、観察しやすい場所にできるにも関わらずなぜか発見が遅れることが多いのです。

我々の病院を訪れる患者さんで、大都市に住み、多くの医療機関に囲まれて暮らしているにもかかわらず、進行舌癌になってから来院する人は珍しくないのです。舌癌がなかなか発見されない理由は、患者本人に知識が不足していることもありますが、歯科医や医師が見過ごしたケースも少なくないのです。

患者さんが口の中の異常を医師に訴える時、ほとんどの人が「口内炎です」といいます。その結果、カルテ上でも口内炎という診断名になってしまいます。これは患者さんが内科に行って「風邪を引きました」と自己診断して風邪薬をもらってくるのと同じ事であります。口内炎という病名は、患者さんにとっても医師にとっても安心出来る病名なので無意識に受け入れられてしまうものかもしれません。

かくして、初期の舌癌は確定診断が得られないまま放置され、進行癌になるのです。

参考文献 咀嚼健康法~脳と体を守る~ 中公新書

2008年6月 5日 (木)

こんなに大切な噛み合わせ2

昨日の続きです。本日も宮田隆先生の著書よりお届けいたします。

噛み合わせと歯周病

歯根膜ですが、最近になってその驚異的な役割と機能が明らかになってきました。後で詳しくお話しますが、失われた骨を再生する夢の治療方法の原理もこの歯根膜にあります。

また歯根膜は噛む力を上手に分散する「ショックアブソーバー」の役目もあります。このしょっく・アブソーバーはセンサーも兼ねていて、私たちが「歯ごたえがいい」とか「歯触りがいい」などと食べ物の味わいを表す言葉にもありますように、噛むことで食べ物の個性を瞬時に判断することも出来ます。つまり、私たちがおいしく食事が出来る「感触」を歯根膜が果たしているのです。

さて、歯周病は「付着の喪失」を伴う感染性炎症疾患である、とお話しました。付着の喪失というのは、要するに歯を支えている骨が無くなっていくことですが、同時に歯根膜も失われます。それは歯根膜が骨から歯に向かって供給されているので当然のことです。

「付着の喪失」が無ければ、歯根膜は100%の量で歯を支えることが出来ます。ですから、歯はびくりともしませんし、何の違和感もなく(虫歯や知覚過敏があったら別ですが)噛むことが出来ます。しかし、歯周病が進行して、例えば骨が半分くらいなくなったら歯を支えている歯根膜の量も半分になってしまいます。

それでは、実際に1本の歯にどのくらいの負荷がかかるのでしょうか。ブラウムという学者が詳細な実験をして、6~8歳で78ニュートン、20歳程度で176ニュートンの力が加わることが明らかになりました。

また、25~40歳ぐらいの健康な成人が噛む力では最大となり、200ニュートンくらいあると考えられています。

ニュートンという単位は、私たちにはあまり馴染みがありませんが、「1キログラムの質量をもつ物体に1メートル毎秒の二乗の加速度を生じさせる力」と定義されています。ニュートンはまた重量の単位でもありますので、地球表面において質量1キログラムの物体の重量は約9.81ニュートンで逆にいえば、質量9.81-㎏(約101.94㎏)の物体は約1ニュートンの重量をもつことになります。したがって子供達で約8キロ、大人だと約18キログラムの力が1本の歯に加わる事になります。

ですから、健康な成人で28本の歯がすべて揃っているとすると、約5.600ニュートンつまり、570キログラム強の力で噛んでいることになります。

もちろん、前歯や奥歯では力の差が違いますから、あくまで理論上の話しなのですが、いずれにせよ人が「ギュッ」と思い切り噛むと500キログラム近い力になることになります。

成人で28本の歯の歯周組織すべてが健康とした場合、1本の歯への負担は200ニュートンとなり、全部で5.600ニュートンになります。もし歯を失ったとすると、その最大の力を維持するには1本の歯にどの程度の負担がかかるかをシュミレートしたとすると、例えば、8本の歯を失うと約倍の400ニュートンの負荷が1本の歯に加わる事になります。もちろん、これは理論的な推論で実際にはこのようにはなりません。しかしすくなくとも歯を失うことによって残っている歯に大きな負担がかかることには間違いありません。

参考文献 歯周病の本当に怖い話し 宮田隆著 医歯薬出版 

2008年6月 4日 (水)

こんなに大切な噛み合わせ1

今回から、何回かに分けて宮田隆先生の著書「歯周病の本当に怖いわけ」よりお届けいたします。

歯周病はお口の中を清潔に保っていれば、進行を遅らせることができるのでしょうか?残念ながら答えは「ノー」です。

歯周病の進行は感染性の炎症と「力」による、と専門家は考えています。「力」とは、私たちが毎日物を食べる「噛む」という行為そのものです。

実は私たちが食事に費やす時間、つまり物を食べるために噛む時間というのは意外に短いのです。もちろん個人差もありますが、本気で噛んでいる時間はせいぜい数十分ではないでしょか。

「良く噛んで食べる」という本に面白い記述があります。学生達に弥生時代から平安、鎌倉、江戸の初期、後期、そして昭和10年代を経て現代までの7つの時代の代表的な食事を与えて、どのくらいの回数を噛み、そしてそれぞれの食事に費やした時間を調べてみたそうです。

その結果、弥生時代の食事は3990回で51分も時間を費やしたそうです。その後、噛む回数は減ってきていますが、それでも千回以上は噛み、食事に費やす時間も多少ばらつきがあるものの15分から30分くらいかけていたそうです。

ところが、現実は実に620回、わずか11分で終わってしまうのだそうです。それだけ、食べ物が軟らかくなった、ということなのでしょが、問題はカロリーです。現代は過去のおよそ倍のカロリーを摂っているのです。噛む回数も食事の時間も昔の半分くらいで摂取カロリーだけは倍。この本の著書、斉藤滋氏はそんな日本人の噛まなくなった傾向を警告しています。

噛み合わせと歯周病

逆に考えると、現代日本人は噛まなくなったのだから「力」の影響は少ないのでは、と考えるのが普通ですが、実はそうではありません。食事の時に噛むのは一日のうちそう長い時間ではありませんが、むしろ、睡眠中とか無意識で噛んでいる方がはるかに長いのです。

それが顎の関節や筋肉に異常が出る「病的」な状態になると「ブラキシズム」や「顎関節症」といった病名が付きますが、ほとんどの方はそんな障害を与えたことがあるのです。

歯と歯周病組織の事をもう一度おさらいしておきましょう。歯は骨の中に埋まっています。厳密にいうと、もともと骨の中にあった歯のオリジナルが成長するのに従って外に飛び出てきた、といったほうが正解でしょう。それ「萌出」といいます。そして、歯を外に押し出すネットの役目をしていたのが歯根膜と呼ばれる細い繊維です。

ある年齢に達すると歯はしかるべき所まで外に出ると萌出をやめます。ちょうどその場所が、前にお話しした歯冠と歯根を分けるセメント・エナメル鏡といわれる部分なのです。そして、歯を押し上げていたネットは、今度は歯を取り囲むように骨と歯を結んでしっかり繊維で固定します。ですから、歯は骨と直接くっついているのではなく、繊維を介在して安定を保っているのです。

明日はこの歯根膜の続きからです。

参考文献 歯周病の本当に怖いわけ 宮田隆著 医歯薬出版 

2008年6月 3日 (火)

“YouTube”で受診行動を促進

今回は、デンタルトリビューン紙2008年6月号よりお届けいたします。

“You Tube”で受診行動を促進~歯科診療所の新たな広報戦力~

(ドイツ)歯科医院を訪れることを考えるだけで恐ろしいという患者さんがいます。このような反応を引き起こしているものは、扁桃体と呼ばれるアーモンド形をした脳の器官です。この器官は、危険の可能性を感知すると、身を守るために逃走反応を引き起こすよう、その情報を一連の神経経路に伝えます。

全世界で患者の5~15%が歯科恐怖症であるとの調査があります。そのため未治療の齲蝕や歯周病が全身の健康状態に深刻な影響を与えかねないにも関わらず、治療を受けられないでいます。

歯科診療の解説ビデオをyou tubeに掲載

最近の歯科恐怖症患者専門のクリニックでは、歯科医師とともに精神科医が治療に参加し、患者が通常の歯科治療を受けられるよう、恐怖と不安をコントロールする技術を提供しています。

米ペンシルベニア州の歯科医師Jerry Gordon氏も同様の戦略を用いています。さらに同氏は自身のウェブサイト、そして翌年には“you tube”に映像コンテンツの掲載を始めました。

you tubeは、2006年に16億5.000万円ドルでグーグルに買収されたきわめて人気の高い動画共有サイトであり、世界中のユーザーが投稿したビデオ映像をいつでも閲覧することが出来ます。

同氏のビデオは地元の制作会社、Swamp Queen Production社によって制作されており、根菅治療や抜歯、そのほかエアーアブレージョンや審美歯科治療の処置法などの臨床ビデオに加え、無痛治療や歯科恐怖症の解説をいったトピックも扱っています。

同氏は、「よいウェブサイトは、患者が診療所を選ぶための判断材料になりうる」というのが持論だと述べ、「自分の仕事を自分の町に人ばかりではなく、世界中の人たちに見てもらえることは非常に感動的です」と語っています。

系統的脱感作法の一手法として

“Dr.90210”や“The Swan or Extreme Makeover”などの形成外科医の仕事とプライベートを描いたテレビ番組とその台頭とその人気に伴って、人々が実際の治療の様子を目にする機会が増えています。

Gordon氏は「私の臨床ビデオがすべての歯科恐怖症患者のためになるとは言わないけれど、メリットがある患者もなかにはいるはずです。この方法は、行動心理学ではよく知られている方法で、系統的脱感作法または段階的曝露療法ともいわれています」と説明します。

つまり、歯科恐怖症の処置の様子や器具を目にすることによって、歯科治療の環境に慣れることによって恐怖心が薄まる効果を期待しています。

you tubeを利用した同氏の活動は、多くの反響を招いており、ニューヨーク・タイムズ紙やインターナショナル・ヘラルド・トリビューン紙、ボストン・グローブ紙に掲載されました。その影響は大きく、Gordon氏によると「ニューヨーク・タイムズ紙でビデオを見たという患者が、根管治療のためにニューヨークから約100マイルも離れた私の診療所まで来院してくれた事もありました」とのことです。

同業者からの反応はsわまざまで、「ビデオについて少しけちをつけていた歯内療法医が何人かいる一方で、こうした手法を気に入り、コツを聞いてくる歯科医師もいました。なかでも、根管治療が必要な歯科恐怖症の患者がビデオのおかげで治療を受けることが出来たという声があったのが一番嬉しかった」と同氏は話します。

そのほか、you tubeでビデオを見て、引退したアメリカンフットボール選手の治療など同氏が取り組んでいるほかの診療について連絡をしてきた歯科医師も何人もいたといいます。

同氏は、「You tubeにビデオを公開することによって、私が行っていることを知ってくれる方の範囲がずいぶん広がりました」と活動の効果を話し、「私のビデオを見ることが、少しでも歯科医師や歯科治療への恐怖心を克服するのに役立っています」と述べました。

2008年6月 1日 (日)

入れ歯相談所1

今回は、佐藤満先生の著書「入れ歯相談所」よりお届けいたします。

悩み1 口をあけると上の入れ歯が外れてしまいます。

口をあけるたびに上野入れ歯が落ちてきます。いつも外れてしまうのか心配で、口を大きくあけることも出来ません。話すことも食事も落ち着いて出来ません。どうすれば良いのでしょうか?

解決法

患者さんにとって最悪の入れ歯は口をあけると落ちてくる入れ歯であることはいうまでもありません。落ちてくる理由としては5つの原因が考えられます。入れ歯の大きさ、厚さ、噛み合わせ、歯の位置、歯肉との適合です。

まず大きさですが、入れ歯の縁が長すぎる場合です。口を閉じている状態と開けた状態とでは筋肉の動きで頬の粘膜の一番深い位置が変化します。そのため長すぎると口を開けた時に頬の粘膜に押し上げられて、外れる力が加わります。

入れ歯の縁が厚すぎる時も、同じように頬の粘膜の動きに影響されます。これは指を入れてみるとすぐ理解して頂けると思います。頬と歯の間にあるくぼみに指を入れてみてください。閉じた状態から口を開けると指が頬に押されるのがわかると思います。これが厚すぎたら外れる理由です。

次ぎに噛み合わせです。左右均等に噛み合っていないと入れ歯は安定しません。ゆっくりと上の歯と下の歯を合わせてみてください。どこか先にあたる歯や滑りながら噛み合ったりしていませんか?もしそうなら噛み合わせの調整が必要となります。

歯の位置も重要です。特に前歯ですが、前の方に並べられている唇の力によって押さえつけられると外れてしまいます。入れ歯は患者さんの口をかたどった模型で造られますが、そこに唇や頬などは存在しません。したがって入れ歯を造っていく段階で歯を並べるのにちょうど良い場所を患者さんと一緒に探っていかなければならないわけです。

最後に適合性です。入れ歯と歯肉がどれだけぴったりと隙間なくくついているかです。ぴったりしていたら吸着力が働きます。ちょうど吸盤がくっつくのと同じように、歯肉に入れ歯が吸い付き落ちなくなります。適合が悪いと吸着力が働かず簡単に落ちてしまいます。

以上のような原因があると入れ歯は外れやすくなります。入れ歯は本来あるべき位置におさまらなければなりません。その位置をデンチャースペースといいます。技術的にも非常に難しいのですが、頬に寄りすぎず、舌に寄りすぎず、ちょうどぴったり収まる位置を見つけて入れ歯を造っていかなければなりません。

参考文献 入れ歯相談所 佐藤満著 ブイツーソリューション・星雲社

2008年5月28日 (水)

虫歯で死ぬこともある

本日は、野田先生の著書「歯周病で死ぬのはイヤだ!」よりお届けいたします。

虫歯で死ぬこともある

あるサラリーマンの方の歯肉が、腫れるようになりました。しかたなく歯科医院を訪れたところ、歯肉を切開して膿みを出したそうです。帰宅後、急に熱が出てきて、しかも悪寒と胸の痛みを訴えて立つことが出来なくなりました。慌てて救急車を呼んで病院に行きました。

原因は、歯肉の血管から入った細菌が、肺にまわった結果の肺炎でした。しかも、もし体力が落ちていたり、ほかになにか持病でもあったら、命も危なかった、と医師にいわれたそうです。

本人は、まさか菌が原因で命の危険にさらされるなんて思いもしなかったよ、歯を軽くみていたな、と反省しきりでした。

また、平成19年3月12日の産経新聞には、黒人の少年が虫歯で死亡したという記事が載りました。「米メリーランド州で先月末、12歳の貧しい黒人少年が虫歯を悪化させ死亡した。貧困差が最低限の医療さえ受けられない格差社会の現実を浮き彫りにした。デーモンド・ドライバー君は今年1月、ひどい歯痛を母親に訴えた。病院に運び込まれた時虫歯の黴菌が脳にまわっていた。二度の手術を受けたが、先月25日に死亡した」(ワシントン=渡辺浩生)

さらに、高齢者の方では、次のようなことが起こります。

右の下の奥歯が痛かったそうですが、たいしたことはないだろうと旅行に出かけました。旅先から帰ってきても痛みが治まらないため、歯科医院で抗菌剤を処方されました。

翌日、症状が悪化したため、内科へ紹介されました。内科では、点滴で抗菌剤を二日間投与しましたが、症状はよくなりません。そこで、総合病院へ転送されました。総合病院の検査では、未治療の糖尿病が明らかになりましたが、翌日敗血症ショックで亡くなりました。

このように、かくれ糖尿病などの持病をもつ場合、歯の病気は命に関わることになります。

*菌血症と敗血症

一般に、手や足に切り傷などが出来た場合、すぐに傷口を洗います。消毒薬がある場合には、薬を使って消毒します。

これは、細菌が傷口から入り、血管を通って体全体にまわらないようにするために行われます。

同様に虫歯菌や歯周病菌も、虫歯の穴や弱った歯肉を通して血管に入ります。症状が軽い場合、これを菌血症と呼びます。さらに、侵入した細菌が増えて、全身性の炎症反応を起こした場合を敗血症と呼びます。細菌は血管を通じて体の中の臓器に運ばれて、サイトカインストームと呼ばれる全身性の炎症反応を起こし、生理活性物質が身体中で大暴れして多臓器不全を起こします。

参考文献 歯周病で死ぬはイヤだ! 野田隆夫 野田雅代共著 光人社

2008年4月24日 (木)

歯科用麻酔は本当に安全か?

本日は、徳島大学編集の「なるほど現代歯塾」よりお届けいたします。

歯科の麻酔は本当に安全?

◇局所麻酔剤

歯科で使用されている局所麻酔は大変安全ですが、まれに局所麻酔をすることで、様々な合併症が起こることがあります。これら合併症の原因には、局所麻酔によるものとそれ以外のものがあります。

歯科で用いられる麻酔の注射液の中にはさまざまな成分が添加されています。歯科では、リドカインというアミド型の構造をもった局所麻酔薬が最も多く使用されています。

リドカインはアレルギーを起こしにくく、アレルギーの症例報告はほとんどないので、局所麻酔薬のアレルギーと思われている人の多くは、他に原因がある可能性があります。

そのほかに、局所麻酔剤の中には、防腐剤としてパラベン類が添加されています。パラベンは、化粧品、医薬品、石けん、歯磨剤などに含まれており、パラベンで皮膚炎などのアレルギー症状が出る人は、局所麻酔剤に対しても注意が必要です。

また、局所麻酔剤の中には麻酔が長い時間効くように、エピネフリンという血管収縮薬が添加されています。

麻酔注射の直後、エピネフリンの影響で動悸がすることがあります。狭心症や心筋梗塞など心臓に疾患がある人は、特に注意が必要です。

★心理的要因

歯科の治療、特に麻酔注射は痛くて不愉快なものです。恐怖心や不安感などが強い患者さんの場合、麻酔注射などがきっかけで気分が悪くなることがあります。最も多いのは神経原性ショックといわれるものです。麻酔注射をした時などに、急に気持ちが悪くなり、冷や汗が出たり、吐き気がしたり、力が入らなくなったり、目の前が真っ暗になりきが遠くなったりします。

この神経原性ショックは、口の周りに痛み刺激が加わることで三叉神経反射という自律神経反射が生じることが原因です。

不安や恐怖心は呼吸にも影響を与えます。歯科治療中に呼吸が激しくなりパニックに陥ることがあります。過換気症候群といわれ、激しい動悸がして、息苦しさを感じたり、手足が痺れてきたりします。ひどくなると意識がなくなります。

過換気症候群を防ぐには、静脈内に鎮静薬を注入して不安を軽減する方法が効果的ですが、β遮断薬も効果があります。

□麻酔の方法

歯科の局所麻酔の方法には、顎の骨の外側(歯肉)に注射をしてごく限られた部位だけを麻酔する浸潤麻酔と、神経の近くに注射をして広い範囲を麻酔する伝達麻酔があります。

まれにですが、浸潤麻酔では、注射部位に潰瘍などが出来ることなどのおもに局所的な合併症が、伝達麻酔では、口が開きにくくなったり、神経麻痺が生じたりなどの合併症が起こる危険性があります。

◇死亡事故

数はごくごく少ないのですが、歯科治療中にも死亡事故が報告されています。原因について正確なことは分かっていませんが、窒息が多いとの報告があります。

そのほかに、心筋梗塞や脳卒中発作、出血、異物(歯や金属のかぶせもの)の肺内吸引。縦隔気腫、空気塞栓などが報告されています。

参考文献 なるほど現代歯塾 徳島大学歯学部偏 富岡重正著 医歯薬出版

2008年4月14日 (月)

歯科恐怖症を克服

本日は、デンタルトリビューン紙2008年4月号からお届けいたします。

経口剤による鎮静法で歯科恐怖症を克服(米国)

不安障害に悩まされる人が増えている現在、歯科恐怖症の克服への注目も高まっています。米国立精神衛生研究所によれば、米国では毎年4.000万人が一つ以上の不安障害に罹患しているといいます。

過去の疼痛経験が歯科恐怖症と関連

全般性不安障害(GAD)から心的外傷後ストレス障害(PTSD)に至るまで、不安障害の重篤度は多様であります。歯科では近年、疼痛を軽減し、快適かつ迅速に処置を終えられる治療法が導入されつつありますが、歯科恐怖症の患者さんは、針やタービン(歯を削る機械)の事を考えただけで憂鬱になります。

幼少時に経験した、痛みを伴う歯科治療が恐怖の根元となっていると考えられます。患者の不安が現実のものであろうと想像上のものであろうと、彼らの感じている恐怖は現実のものなのです。このため治療が必要であっても、歯科医院から遠ざかっている患者さんは多いのです。このような恐怖から多くの人を救う方法として、経口剤による鎮静法を提供する歯科医院が増加しています。

経口鎮静法により不安感を除去

注射剤と比較して経口剤は管理や投薬が簡便であり、安全性も確認されています。経口鎮静法では、GADやPTSDの治療に広く使われていまるベンゾジアゼピン系の薬が使われています。頻繁に処方されるロラゼパムはパニック障害の治療で、トリアゾラムは睡眠導入剤として、そしてジアゼパムは不安障害や不眠症の治療によく使われています。

それぞれの用法、用量にしたがって歯科治療前もしくは1時間前に服用することで、患者さんはリラックスして快適に治療を受けられます。歯科医は、患者さんの精神状態や他の薬との相互作用を考慮して薬の種類や用量の変更、あるいは、診療時に処方の追加を行うこともあります。

さらに、経口鎮静法は不安感を取り除くだけでなく、不安を持続させる恐怖のスパイラルを断ち切るのにも有効です。患者さんは安心して、平静に歯科治療を受けることができるため、歯科治療を不快な経験ではなく、前向きにとらえなおすことが出来ます。

これにより、徐々に歯科治療に対する姿勢が変わってきます。また、1回の来院時に今までより多くの治療を実施できるので、来院回数を減らすことが可能になり、患者さんにとっても歯科医院にとっても都合がよいのです。

経口鎮静法を用いた歯科恐怖症の克服は、しばしば「リラクゼーション歯科診療」と呼ばれます。不眠症の治療に使われる薬剤を使用しますが、治療中に患者が意識を完全に消失するようなことはない。しかし薬剤によって意識レベルは低下させているため、患者さんは治療中の出来事をほとんど覚えておらず、術後の不安感や疼痛の記憶も軽減されます。

米国では、成人の30%が歯科医院での定期検診に行っていないと推計されます。経口鎮静法を利用すれば、恐怖心のために歯科医院に行けずにいる多くの患者さんが救われます。

2008年4月 7日 (月)

歯科金属アレルギーで、何が起こる?

昨日の続きです。本日も吉川先生の著書よりお届けいたします。

☆アマルガムは消えていくのか・・・・・☆

有機水銀中毒による水俣病のことは、読者の皆さんもよくご存じのことと思います。では、なぜ水銀を含むアマルガムという合金が、歯科金属として使われているのでしょうか。

これは、アマルガムに含まれる水銀は無機水銀だから安全だ、と考えられているからなのです。

実際、100年以上の歴史を持つアマルガム合金に対してはアメリカ歯科医師会、日本歯科医師会、厚生労働省が安全宣言を出していて、これを使用することは現在も歯科医療で選択される一つの方法として認められています。

もちろん、最近ではいろいろな歯科材料が普及してきましたので、審美的にも強度としても、アマルガムよりすぐれたものが使用されることが多くなってきました。しかし、かつてアマルガムはとてもよく使われていたのです。

歯科金属アレルギーの問題が「グレーゾーン」で問題になっているいま、「疑わしきは使用せず」の姿勢で、アマルガムを使用しない歯科臨床医も増えてきています。新しく治療する患者さんは、気になるようであれば、歯科金属の材料について積極的に質問するようにするとよいと思います。

アマルガムがアトピー性皮膚炎を起こす、あるいは本書(実際の参考文献で参照してください)の冒頭で紹介したアメリカの事例のように、神経に機能的な問題を引きおこすということは、実証できていません。しかし、アマルガムは自然淘汰されていく運命にあるようです。

歯科金属については、このようにきわめてゆっくりとした変化が、いま起こっているところなのではないかと考えられます。

〔症例 歯の治療直後、突然顔に湿疹ができはじめた)

Cさんは57歳の女性です。会う人ごとに「きれいなお肌をしていますね」といわれるほど、色白できれいな女性でした。

ところが、近所の歯科医院で治療を受けた後から、急に顔に湿疹が出来はじめました。きれいな肌は見る見るボロボロになっていったそうです。治療を受けた歯科医に相談したところ、「金属アレルギーかもしれない」といわれ、居住地の市民病院の皮膚科を紹介されました。

Cさんは、皮膚科を受診して金属アレルギーかどうか調べてもらおうと思いました。ところが、検査は拒否されました。Cさんが「検査して欲しい」とお願いしているのにも関わらず、医師は「あなたのこの症状は、絶対に金属アレルギーではない。自分の長年の経験からいって、そんなことは絶対にあり得ない」といわれ、パッチテストすらもしてもらえなかったそうです。

同じ病院の歯科口腔外科でも相談しましたが、やはりその歯科医にも「金属アレルギーではないと思う」といわれたそうです。困ったCさんは、インターネットで歯科金属アレルギーについて調べ、当院のホームページを見て受診したのです。

早速パッチテストをして見たところ、17種類の金属のうち白金、クロム、亜鉛、マンガンの4種類の金属アレルギー反応が現れました。明らかに金属アレルギーです。

亜鉛は、現在Cさんの口の中に入っているすべての詰め物に含まれている金属元素です。そこで、口の中の金属をすべて除去することにしました。メタルフリーの治療を行ったのです。

そして15ヶ月後。Cさんの顔からは湿疹は消え失せ、もとのきれいな肌に戻ったのです。治癒まで15ヶ月もかかったのは、おそらくCさんの新陳代謝が良くなかったからだと考えられます。真夏でもほとんど汗をかかないので、体内に溜まった金属イオンが排出(解毒)されるまでに、時間がかかったのだと思われます。

なお、この間、Cさんは皮膚科的治療は一切行っていませんでした。

皮膚科の先生がおっしゃったという根拠はわかりませんが、当院での治療の経過と結果を見れば、明らかに歯科金属アレルギーによる湿疹と考えられます。

このケースのように、長期にわたって慢性化した皮膚疾患に悩んでいる患者さんは、多いのではないかと思います。

後日談ですが、顔の湿疹がひどい頃、自分の顔がクシャクシャになる夢を見てうなされたことが何度もあったそうです。さぞかし辛い思いをされてきたことでしょう。

参考文献 金属アレルギーと歯科治療 吉川涼一著 現代書林

2008年4月 6日 (日)

歯科金属アレルギーでなにが起こる?3

昨日の続きです。本日も吉川先生の著書からお届けいたします。

☆アトピー性皮膚炎(歯科金属との関係は解明されていないが・・・・)

治りにくいアトピー性皮膚炎の原因が、実は口の中の歯科金属ではないかということも、最近よく耳にすることではないかと思います。

実際、当院でも病院を転々としてもよくならなかった皮膚炎が、メタルフリー治療のあとで改善した症例がいくつかあります。

しかし、最初にはっきりしておかなければいけないのは、歯に詰めたりかぶせたりした金属が、アトピー性皮膚炎を起こしているという証拠は何一つ見つかっていないということです。メタルフリーにすることで、難治性のアトピー性皮膚炎が治る患者さんもいるし、治らない患者さんもいます。

歯科金属がアトピーを引き起こすという疑いに対して、化学は「完全にクロ」と判定できていません。しかし、科学者の目から見て「完全にシロ」とはとても言い切れないような“状況証拠”はたくさんある、それもまた事実です。

したがって歯科金属アレルギーに取り組んでいる歯科医は、「非常にクロに近いグレー」しかし「決してクロとしては扱えない」問題として、患者さんと相談しながら治療を行っているわけです。

☆京都の小学生に対する疫学的調査から☆

「状況証拠」の一つを、次ぎに紹介しましょう。口の中に存在する歯科金属、とくにアマルガムに含まれる水銀が、アトピー性皮膚炎の重大な原因になっているのではないか、という研究報告です。

京都市のアレルギー科医師、島津恒敏博士(島津医院)は、アマルガムが小児アトピー性皮膚炎の発症に、どの程度の影響を与えているかを調べました。(『皮膚』第42巻・増刊22号、2000年10月)。

島津先生は、京都市内の小学校の1年生から6年生までの256名に対して、口の中の歯科金属のアマルガムがあるかどうかを調べました。また同時に、アトピー性皮膚炎を発症しているかどうかも調べました。そのうえで、アマルガムが口の中にある子供達とアマルガムがない子供達の間で、アトピー性皮膚炎の発症率にはっきりした差が認められるかどうかを検討しrたのです。結果は、明らかでした。

アマルガム治療を受けた児童(98名)のうち、皮膚炎を有する児童は48%であったのに対し、アマルガム治療を受けていない児童(158名)には、皮膚炎が7.6%しかなかったといいます。つまり、アマルガム皮膚炎に対して、実に6倍以上もリスクが高いという結果がでています。

歯科金属アレルギーに取り組んで、長年「メタルフリー治療」を行っている歯科医院では、歯科金属が原因で、アトピー性皮膚炎を起こしていたと思われる患者さんの症例は、いくつも持っているのではないかと思います。

たとえば、大阪のある歯科医も、アトピー性皮膚炎の患者さんにメタルフリー治療を行った結果、約7割の患者さんに改善が見られたと報告しています(産経新聞・9/11)

明日へ続きます。

参考文献 金属アレルギーと歯科治療 吉川涼一著 現代書林

☆アマルガムは消えていくのか・・・・・☆

有機水銀中毒による水俣病のことは、読者の皆さんもよくご存じのことと思います。では、なぜ水銀を含むアマルガムという合金が、歯科金属として使われているのでしょうか。

これは、アマルガムに含まれる水銀は無機水銀だから安全だ、と考えられているからなのです。

実際、100年以上の歴史を持つアマルガム合金に対してはアメリカ歯科医師会、日本歯科医師会、厚生労働省が安全宣言を出していて、これを使用することは現在も歯科医療で選択される一つの方法として認められています。

もちろん、最近ではいろいろな歯科材料が普及してきましたので、審美的にも強度としても、アマルガムよりすぐれたものが使用されることが多くなってきました。しかし、かつてアマルガムはとてもよく使われていたのです。

歯科金属アレルギーの問題が「グレーゾーン」で問題になっているいま、「疑わしきは使用せず」の姿勢で、アマルガムを使用しない歯科臨床医も増えてきています。新しく治療する患者さんは、気になるようであれば、歯科金属の材料について積極的に質問するようにするとよいと思います。

アマルガムがアトピー性皮膚炎を起こす、あるいは本書(実際の参考文献で参照してください)の冒頭で紹介したアメリカの事例のように、神経に機能的な問題を引きおこすということは、実証できていません。しかし、アマルガムは自然淘汰されていく運命にあるようです。

歯科金属については、このようにきわめてゆっくりとした変化が、いま起こっているところなのではないかと考えられます。

〔症例 歯の治療直後、突然顔に湿疹ができはじめた)

Cさんは57歳の女性です。会う人ごとに「きれいなお肌をしていますね」といわれるほど、色白できれいな女性でした。

ところが、近所の歯科医院で治療を受けた後から、急に顔に湿疹が出来はじめました。きれいな肌は見る見るボロボロになっていったそうです。治療を受けた歯科医に相談したところ、「金属アレルギーかもしれない」といわれ、居住地の市民病院の皮膚科を紹介されました。

Cさんは、皮膚科を受診して金属アレルギーかどうか調べてもらおうと思いました。ところが、検査は拒否されました。Cさんが「検査して欲しい」とお願いしているのにも関わらず、医師は「あなたのこの症状は、絶対に金属アレルギーではない。自分の長年の経験からいって、そんなことは絶対にあり得ない」といわれ、パッチテストすらもしてもらえなかったそうです。

同じ病院の歯科口腔外科でも相談しましたが、やはりその歯科医にも「金属アレルギーではないと思う」といわれたそうです。困ったCさんは、インターネットで歯科金属アレルギーについて調べ、当院のホームページを見て受診したのです。

早速パッチテストをして見たところ、17種類の金属のうち白金、クロム、亜鉛、マンガンの4種類の金属アレルギー反応が現れました。明らかに金属アレルギーです。

亜鉛は、現在Cさんの口の中に入っているすべての詰め物に含まれている金属元素です。そこで、口の中の金属をすべて除去することにしました。メタルフリーの治療を行ったのです。

そして15ヶ月後。Cさんの顔からは湿疹は消え失せ、もとのきれいな肌に戻ったのです。治癒まで15ヶ月もかかったのは、おそらくCさんの新陳代謝が良くなかったからだと考えられます。真夏でもほとんど汗をかかないので、体内に溜まった金属イオンが排出(解毒)されるまでに、時間がかかったのだと思われます。

なお、この間、Cさんは皮膚科的治療は一切行っていませんでした。

皮膚科の先生がおっしゃったという根拠はわかりませんが、当院での治療の経過と結果を見れば、明らかに歯科金属アレルギーによる湿疹と考えられます。

このケースのように、長期にわたって慢性化した皮膚疾患に悩んでいる患者さんは、多いのではないかと思います。

後日談ですが、顔の湿疹がひどい頃、自分の顔

2008年4月 5日 (土)

歯科金属アレルギーで何が起こる?2

昨日の続きです。本日も吉川先生の著書からお届けいたします。

金属アレルギーに関連のある疾患

☆掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)

歯科金属アレルギーの関連のある疾患として、最もよく知られているものが「掌蹠膿疱症」とよばれる皮膚炎です。

手や足にニキビのようなぷつぷつの湿疹が出来て、それが水疱になったり膿疱になったりします。痛くて立てない、歩けないというほどの症状が悪化することもあり、さらにひどくなると、女優の奈美悦子さんがなったような「掌蹠膿疱症性骨関節炎」という関節症状も引き起こします。こうなると、激痛に苦しむことになります。

ちなみに奈美さんの場合は、その原因が口腔内金属と関係があったのかどうかはわかりません。著書「死んでたまるか」(主婦と生活社)には、口の中の金属が原因かもしれないと考えて歯科医院へと行ったということは書いてありました。

そこまでひどくならないにしても、治ったと思ったらまた悪くなるということを繰り返す治りにくい病気で、皮膚科の特定疾患の一つとされています。

もちろん、歯科金属だけが原因ではありません。「金属アレルギー」の他に「感染アレルギー」(病巣アレルギー)もあげられます。扁桃腺から起こることは以前からよく知られていますし、体のどこかにある慢性的な感染病巣が原因になることも少なくはありません。

歯科領域では、根尖病巣(歯の根の先に出来る病巣、レントゲンで黒く映る)や慢性の重度の歯周病が原因になる場合もあります。

しかし、最近になって、原因が分からないような場合に、メタルフリーにすると、掌蹠膿疱症が治ってしまうことが多いことが分かってきました。こうして、ようやく口腔内の金属が原因の一つとして考えられるようになってきたのです。

〔症例〕頑固な掌蹠膿疱症、メタルフリーにすると半年で完治

27歳のかわいらしい女性、Bさんは、いつもロングスカートをはいています。それは高校生のころから出始めた足の湿疹が気になるからです。手にはニキビのようなブツブツが出ていました。

皮膚科には、何年も通っていました。掌蹠膿疱症と診断され治療を続けましたが、良くなったり悪くなったりそ繰り返し、いっこうに治りません。

皮膚科には良い温泉があると聞けば、遠方といわず訪れました。(Bさんは、「いちばん効果があったのは桃太郎温泉だったと言っていました)しかし、やはり治りませんでした。

インターネットで調べて「金属アレルギーが原因かもしれない」と考えたBさんは歯科金属アレルギー治療を行っている当院のホームページを見て来院されました。

パッチテストを行ってみると、金にアレルギー反応が現れました。

よく、「金ならアレルギーは出ないから、金属アレルギーの人は金を使うといいよ」と言われますが、パッチテストを行っている歯科医としては、金にアレルギー陽性反応を示す人は少なくありません。油断は禁物です。

Bさんの口の中を診てみると、金合金、金銀パラジウム合金などあが入っていましたので、相談の結果、メタルフリーの治療を行うことになりました。こうして口の中の金属をすべて除去すると、半年後、あれだけ頑固だった掌蹠膿疱症が、意外なほどあっさり治ってしまいました。きれいになった足を見て、Bさんは喜んでいました。

明日へ続きます

参考文献 金属アレルギーと歯科治療 吉川涼一著 現代書林

2008年4月 4日 (金)

歯科金属アレルギーで何が起こる?1

本日は、吉川涼一先生の著書「金属アレルギーと歯科治療」よりお届けいたします。

歯科金属アレルギーで、何が起こる?

歯に詰めた金属によって起こってくる「歯科金属アレルギー」とは、いったいどんなものなのかを簡単に説明しましょう。

まず第一にお伝えしておきたいのは、むやみに怖がらないでください、ということです。歯に金属を詰めている人のすべてに、金属アレルギーが発生するわけではありません。

そばやタマゴを食べるとアレルギー反応を起こす人は少なくありませんが、大多数の人にとっては、いくら食べても問題を起こさないし、むしろ非常に素晴らしい栄養食品です。

これと同じで、歯科金属も、ほとんどの人にとっては安全なものなんです。

ただし、口の中が荒れやすい、慢性的なアレルギー性疾患がある、いくら調べても原因不明の体調不良が良くならないというような場合には、後述するようなパッチテストをうけてみるといいでしょう。

ではどういう場合に金属アレルギー(歯科金属によって引き起こされる疾患)かもしれないと考えれば良いのでしょうか。

注意したいのは、歯科金属アレルギーというのは、口の中だけに症状が現れるわけではない、ということです。むしろ、口の中以外に症状が現れる事の方が10倍も多いのです。それがやっかいなところでもあります。

私たち日常の感覚では、「金属は水に溶けない」と思われるはずです。しかし、分子レベルでみれば、金属は「イオン」という形で水の中に溶けていきます。歯に詰めた金属はいつも唾液にさらされていますから、イオン化して唾液に溶け、腸管から吸収されて血液中に入り、全身を巡っていきます。そこまでは、事実です。

それが、後述するような体の免疫システムに引っかかって、何かの拍子にアレルギー反応を起こしたり、原因不明の症状に結びついたりすることがあるかもしれない、というわけです。

したがって当然、現れてくる症状は、口の中に限りません。

医学的に歯に詰めた金属が疾患を引き起こすということは、まだ明らかにされてはいませんが、口の中をメタルフリー(詰めた金属をすべて取り去って非金属のものに替えること)にすると改善するなどの症例から、極めて疑わしいと考えられている症状や疾患がいくつかあります。以下、個々の疾患について、症例とともに紹介していきます。

明日へ続きます。